フィリピンの拳銃強盗とスリ①もしも編|旅行者も知っておくべき安全行動

フィリピンは他の東南アジア諸国と比べて、富裕層と貧困層の格差が際立って大きい。成長目覚ましい都市部のビル街から少し離れると、東南アジア最大のスラム「トンド」など、貧困層居住地域が存在するほか、首都圏マカティ市においても、ビジネス街を離れれば子供たちが小銭を求めてくるときがある。地域住民の居住エリアやスラムと比べれば可能性は低いものの、観光地でもスリが依然として発生しており、まれに拳銃強盗も起こる。

本稿では、フィリピンで拳銃強盗やスリにあった場合にとるべき行動や、遭遇確立を減らすための対策を解説する。観光地の主な警察署の位置など、いざという時に役立つ情報も掲載した。日本とは異なる治安状況を把握しつつ、恐れすぎず、リスクを正しく理解して、安全に旅行を楽しんでほしい。

今回は安全に関する情報を扱うため、在フィリピン日本国大使館(以下在比日本大使館)やフィリピン現地の報道機関の発信など、なるべく多くの公的機関の情報を盛り込んだ。文末に脚注としてURLを掲載したので、信頼できる情報源としてリンク先をのぞいてみてほしい。

近年のフィリピンにおける日本人の犯罪被害

ざっくり表すと、フィリピンで日本人が被害を受けた犯罪は、「マニラ首都圏を中心に現在も発生している。拳銃強盗は2024年のピーク時より落ち着いているが、スリや強盗は依然としてどこでも発生している」と言える。

ここでの拳銃強盗とは、拳銃を用いて被害者を脅迫し、金品類を略奪する犯罪を指す。被害者が銃口を向けられるだけの事例のほか、地面への発砲を伴う事例1、拳銃のグリップで被害者が殴打された事例2、犯人が飲食店に押し入る事例3などパターンは様々だ。わずかな回数であったと記憶しているが、被害者が撃たれ、亡くなった事例4も存在する。

なお、フィリピンは毎年、「Ber Months:バーマンス」と呼ばれる9月(September)から12月(December)に犯罪件数が増える傾向がある。きらびやかなクリスマスを楽しめる時期だが、フィリピンに初めて渡航する人は避けたほうが安心かもしれない。

拳銃強盗が相次いだ2024年後半-2025年前半

直近では、2024年10月から2025年6月ごろまで、マニラ首都圏で日本人(以下邦人)が被害を受ける拳銃強盗が連続発生した時期があった。1カ月に事件が複数件発生する月も多く、2025年5月には外務省がスポット情報を発表し、注意喚起を行った5

邦人が被害を受けた事件の発生時に在フィリピン日本大使館が発表する情報を見る限りでは、事件は夜間、人けの少ない道で発生することが多いようだ。大通りから一本外れた裏通りや繁華街に限らず、大通りで拳銃強盗が発生する場合もある。バイクタクシーの制服を着てバイクに乗り、被害者が6台のバイクに囲まれた事例6も存在する。

なお、この時期以降に発表された同大使館による拳銃強盗情報は、いずれもマニラ首都圏で発生しており、セブ、ダバオなど他の都市での強盗情報はいまのところ発表されていない。大使館や領事館への報告がない事件が存在する可能性があるものの、マニラ首都圏の犯罪発生件数は、国内の他都市と比べて高いとみられる。

2026年3月時点では減少傾向

同大使館が発表する犯罪情報の発表件数を追う限りでは、昨年度のピーク時と比べ、拳銃強盗の発生回数は減少している。ただし、2025年11月に同大使館が発表した注意喚起情報7にあるように、引き続き置き引きや睡眠薬を用いた強盗に対する注意が必要だ。

もしも被害にあったら

在比日本大使館が例示する安全対策をもとに、命を守ることを最優先に考えた対応方法を紹介する。普段の心がけについては、私が現地で実践していた工夫を後日別記事で紹介する。

事件発生時の対応

犯人が拳銃を所持している場合、発砲によるけがの回避を最優先事項とし、基本的には持っているものをおとなしく渡す。拳銃強盗に対する専門的な知識や能力を持っていない限りは、絶対抵抗してはならない。最重要事項は自分の命とその安全だ。

ある程度ゆっくりとした動作で応じることも重要だ。強盗側も緊張しているはずなので、こちらが素早い動作でカバンを渡したり何かを取り出そうとすると、反撃されると勘違いされ発砲される可能性がある。犯罪者に対して落ち着かなければならない状況は癪ではあるが、急な動作は避け、相手を最低限刺激しないことが肝心だ。(スローモーションくらい遅い動きだと逆にぶちぎれられそう)

スリ、置き引きについては、金品をすでにとられた後であれば、まず周囲を確認し、安全な場所へ移動しよう。無理に犯人を追いかけることは危険を伴う可能性があるため、基本的には避けるべき行動とされている。

金品をとられている瞬間を目撃したら、とりあえず奪還を試み、拳銃の有無や人数に応じて先述のような判断をしてほしい。犯人は1人とは限らず、複数人で待機していることも少なくないようだ。基本は相手を刺激しない姿勢を心掛けよう。

被害後の対応

自分の安全を確保したのち、直後に近くの警備員や警察に報告、相談した後、基本的には以下の機関に連絡する流れになるだろう。

  • 在比日本大使館
  • フィリピンの警察署
  • 旅行保険会社やクレジットカード会社

在比日本大使館

日本人が海外滞在時に最も公的なサービスを受けられる機関は、その国の日本大使館だ。在比日本大使館に被害を報告すると、パスポートを盗まれた場合のフォローアップを受けられるだけでなく、フィリピン滞在中の日本人に対する注意喚起につながる。緊急連絡先等は在比大使館ホームページで最新情報をご確認いただきたい。

在比日本大使館ホームページ:https://www.ph.emb-japan.go.jp/itprtop_ja/index.html

フィリピンの警察署

フィリピンの警察署への報告はやや労力を伴うが、最重要報告先のひとつだ。というのも、フィリピンは被害者が立件手続きをしないといかなる強盗も事件として認定されず、警察による捜索が進まないのだ。日本では被害報告が警察にあった時点で警察が捜査を開始してくれる(被害者の書類記入の難易度も低い)が、フィリピンでは被害者が英語の書類を警察署で書かないと捜索が始まらない。

出典の無い伝聞情報で申し訳ないが、スリ被害については事件当日中に手続きが終わった例を現地で聞いたことがあるので、何週間もかかるような手続きではなさそうだ。

以下、マニラ首都圏の観光地付近に位置し、筆者が現地で実際に存在を確認した警察拠点をいくつか紹介する。

①Makati Central Police Headquarters:マカティ市警察署本部

ビジネス街がある首都圏マカティ市の警察拠点。

②Ayala Police Sub-station 5:アヤラ第5警察分署

マカティ市の大型ショッピングモールエリアに位置する交番。SMマカティとグロリエッタ付近にある。

③Manila Police Station 5 Luneta Park:マニラ市第5警察署 ルネタ公園

リサール公園、フィリピン国立美術館などの近くにある交番。

筆者はフィリピン現地の知人を通して上記3拠点を知り、実際に複数回前を通ったり、一部の建物内に入った経験がある。職員が常駐しており、それなりにしっかり機能している警察拠点という印象を受けた。

旅行保険会社やクレジットカード会社

旅行保険に加入している場合は、保険会社に連絡することでサポートを受けられる場合もある。クレジットカードに関しては、日本でのカード紛失時と同様にカードをとめよう。

とはいえ、既に犯人に奪われて連絡手段が何もない可能性も否めない。まずは大使館や警察署への連絡を優先し、ある程度落ち着いてから保険会社への連絡作業に取り掛かろう。もしものための緊急連絡先を事前に控えておくと良い。

犯人が捕まる可能性は?

明確に数字で表すことはできないが、警察に被害届と捜索願を出し、犯人逮捕につながった事例は少なくない。下記のフィリピン国家警察によるフェイスブックの投稿は、日本人が被害を受けた強盗事件の犯人を、事件から3日後に逮捕した旨を発表している。

盗まれたものが必ず帰ってくるとは言いきれないが、上記の例に限らず、「日本人が被害を受けた強盗事件の犯人を逮捕した」という内容のニュースがしばしば流れるので、捜索願を提出すれば犯人が捕まる可能性がそれなりにあるといえるだろう。被害を受けた際は、多少労力を払ってでも警察に報告し、捜索開始のための手続きをすることをお勧めする。

フィリピンは権力者層の汚職が根深い上に、あらゆる手続き制度に時間がかかる制度自体が問題であることはわかっちゃいる。しかし、フィリピンにも市民の安全を心から想う優秀な警察官が多くおり、窃盗品が戻ってきたニュースが複数回報道で確認されているので、私は警察への届け出を推奨する。

銃が身近に存在する国で

東南アジア11カ国をみても、一般人が銃を合法で所持できる国はフィリピンやタイに限られている。フィリピンのローカル商業施設にも、合法で銃を扱う店や、エアガンを撃てる店が存在する。大型ショッピングモールの警備員は大きなライフル銃を携帯していることが多い。銃はフィリピンで身近な存在なのだ。

ただし、カバンを視界の中で管理して繁華街を避ければ、これまでフィリピンに渡った多くの日本人観光客と同様に安全な観光を楽しめる。日本経済新聞によると、2024年にフィリピンを訪れた日本人観光客数は38万人を超え、増加傾向にあるという8

フィリピン移住の場合においても、普通に生活していれば銃を扱う場面や発砲に遭遇する可能性は低い(私の知人である、マニラ首都圏に住む中間層出身のフィリピン人(31)も、これまで発砲音を耳にしたことはないらしい)。筆者もフィリピン移住経験があるが、危険な場面に遭遇したことはなく、アドリブの効いたローカル文化を沢山知れて、忘れられない日々を送ることができた。

安全情報に関しては、このブログも含め、どこのでくの坊が書いたかもわからない一個人のブログはあてにしないほうが良い(読むにしてもいったん疑った方が良い)。それでも、不安を過度に煽るSNS投稿があふれる中で、フィリピンの治安について冷静に考えられるネット拠点の必要性を感じ、なるべく信憑性の高い情報源と自身の知識をまとめた。

最低限の安全知識をおまもりとして持ちつつ、フィリピン観光を存分に楽しんでほしい。

  1. https://www.ph.emb-japan.go.jp/itpr_ja/11_000001_01890.html ↩︎
  2. https://www.ph.emb-japan.go.jp/itpr_ja/11_000001_01855.html ↩︎
  3. https://www.ph.emb-japan.go.jp/itpr_ja/11_000001_01892.html ↩︎
  4. https://www.abs-cbn.com/news/nation/2025/8/18/two-japanese-nationals-killed-in-malate-shooting-incident-1036 ↩︎
  5. https://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcspotinfo_2025C019.html ↩︎
  6. https://www.ph.emb-japan.go.jp/itpr_ja/11_000001_02147.html ↩︎
  7. https://www.ph.emb-japan.go.jp/itpr_ja/11_000001_01701.html ↩︎
  8. https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB09BVS0Z00C25A1000000/ ↩︎